ある逃亡犯の肖像

免許証や保険証、

 

自身の身分を証明する事が出来ないだけなく偽名まで使って生きてきた。

 

仕事は建築業で住み込み。

 

・・・

 

それでも詮議の眼を潜り抜けて身を潜めるといった感じで無くて、

 

趣味の音楽を楽しんで、

 

ジャズバー等に足繁く通い、

 

周囲に溶け込んで地元の人達と交流している。

 

そんで日々の生活をそれなりに謳歌している。

 

 

70歳まで亡くなるまで、

 

そんな生活を何十年も。

 

・・・・・

 

いや、

 

およそ逃亡犯とは思えんね。

 

生来社交的なんやろうね。

 

愛嬌もあったみたいやし。

 

 

秘密を抱えていたにしても決して孤独では無い。

 

案外悪くない人生だったのではないか。

 

 

羨ましく思うよ。

 

 

・・・・・・・

 

 

自分にも出来るだろうか?

 

 

今住んでいる公団を追い出されたら、

 

彼のように、

 

何処かで住み込みの仕事を見付けることが出来るだろうか。

 

 

ちゃんと馴染めるだろうか。

 

 

・・・・・

 

 

いや、

 

出来る気がしない、

 

 

常に孤独だしね。

 

 

怖いよ、

 

不安でいっぱいだよ。

 

 

 

 

 

「成瀬は信じた道をいく」      著者:宮島 未奈

 

 

眩しいね、

 

読後感はそれしか無いよ。

 

卑屈さや負い目がまるで無い。

 

お天道様の下を堂々と歩いている人生。

 

中学生から大学生へ。

 

年齢を重ねて世界も格段に広がる。

 

相変わらず究極のマイペースで周囲を振り回すけどね、

 

それだけ愛されていることなんよね。

 

 

今後も大いに活躍するであろう成瀬嬢。

 

それでも、

 

「ゼゼカラ」は健在です。